その差押えはやりすぎなのか?『裁決例を読むシリーズ』
今回は差押えに関する裁決例を読んで考えてみました。
(令和6年10月28日.公開裁決)
裁決事例を読むことで「自分のケースに当てはまるのか?」が判断しやすくなりますので、どなたかのお役に立てる場合(あんまりないと思いますが...)がありましたらどうかご参考ください。
どんな事案ですか?
今回の事例は、B税務署が最初に行った差押えに対し、A税務署(裁決例ではA税務署とは記載されていませんが、ここでは分かりやすくA税務署とします)が、自分の所の国税の徴収もしたいから、うちらもその差押えに参加する!(参加差押えといいます)といったことが行われました。ただ、争われたのは、滞納者側が既にされている差押え(B税務署の差押え)に対して、新たにA税務署が参加してくるのは、国税徴収法に規定する超過差押え(滞納額<差押え金額)に当たるから、A税務署の参加差押えは違法で取消しを求める!という内容でした。
争点
A税務署が行った参加差押(既にされている差押えに乗っかること)は、超過差押え(滞納額以上の差押え)に該当するのか否か。
結論
国税徴収法第48条第1項(超過差押え禁止の規定)は、「参加差押え」には適用されない。
滞納国税を徴収するための参加差押えが行われても、「違法な差押え」とは判断されない。
参加差押えとは?
「参加差押え」とは、既に他の税務署などによって滞納処分による差押えがされている財産に対して、別の税務署や市役所、社会保険事務所等が後から参加する形で差押えをする手続きです。 簡単に言うと、「先に差押えしている人がいて、その差押えに相乗りする制度」です。
また、参加差押えは先行の差押えが解除(国税の完納等があれば解除があります)されるまでは滞納者に新たな負担を課すものではありません。
今回の事例の流れ
1.納税者が国税を滞納
2.他の税務署(B税務署)が不動産を差押え(1番手の差押え)
3.原処分庁(A税務署)が「参加差押え」を実施(1番手の差押えに乗っかる形)
4.滞納者が「必要以上に差押えされている!」と主張し、不服申し立て
5.国税不服審判所が「参加差押えには超過差押禁止の規定は準用されない」として請求を棄却
裁決のポイント
- 超過差押えの禁止の規定は、参加差押えには適用されない。
- 参加差押えが「必要以上に差押えた違法な処分」とは言えない。
まとめ
- 通常の差押え → 差押えの範囲が必要以上なら「違法」になる可能性あり(国税徴収法48条:超過差押えの禁止)
- 参加差押え → 既にある先行差押えに“便乗”するだけの仕組みなので、「超過差押禁止」は適用されない
審判所の判断どおり、参加差押えにはそもそも「超過差押え」に関する規定が置かれていません。 そのため、滞納者が「差押えの範囲が広すぎるから違法だ」と主張しても、取り消しを認めてもらうことは難しいといえます。
ただし、滞納者側の心理としては「次から次へと行政機関が差押えに乗っかってくる」という状況に違和感を抱くことはあることと感じます。今回の裁決例から学べるのは、参加差押えは税務上“超過差押え”の対象外であり、取り消しを求めること自体が極めてハードルが高いという点でした。
引き続き『裁決例を読むシリーズ』を取り上げていこうと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
動物紹介コーナー

オスとメスの柄は異なる。
こちらはメスです。
税理士 野﨑 梨沙
参考条文(国税徴収法)
(1)国税徴収法第48条≪超過差押及び無益な差押の禁止≫第1項は、国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押さえることができない旨を規定。
(2)国税徴収法第82条≪交付要求の手続≫第1項は、滞納者の財産につき強制換価手続が行われた場合には、税務署長は、執行機関に対し、滞納に係る国税につき、交付要求書により交付要求をしなければならない旨を規定。
(3)国税徴収法第86条≪参加差押えの手続≫第1項は、税務署長は、徴収法第47条の規定により差押えをすることができる場合において、滞納者の財産で不動産につき既に滞納処分による差押えがされているときは、当該財産についての交付要求は、徴収法第82条第1項の交付要求書に代えて参加差押書を、滞納処分をした行政機関等に交付してすることができる旨を規定。
(4)国税徴収法第87条≪参加差押えの効力≫第1項第2号は、参加差押えをした場合において、その参加差押えに係る不動産につきされていた滞納処分による差押えが解除されたときは、その参加差押えは、参加差押通知書が滞納者に送達された時に遡って差押えの効力を生ずる旨を規定。