何故、住民税は忘れたころにくるのか?

今回は住民税について書いてみようと思います。
会社を退職した後、しばらくして住民税の通知が来て、その額に驚かれた方はいらっしゃるのではないでしょうか。なぜそのようになるのかというと、住民税は前年の所得に対して課税されるからです。これに対し、所得税は今年の所得に対し課税されます。普段は住民税についてあまり考えたことがない方も、いざという時に払えない事態が生じないように、これを機にザックリでも住民税を理解しておくと良いと思います。
目次
1.住民税と所得税の課税方法の違い
2.納付方法は3つ
3.住民税の内訳
4.住民税の申告が必要なのか否か
5.まとめ
1.住民税と所得税の課税方法の違い
結論から言うと、住民税が忘れたころに来る理由は、所得税との課税方法の違いにあります。
住民税は、前年の所得に対して課税。
所得税は、今年の所得に対して課税。
ここでいう、前年の、今年のとは、1月1日~12月31日を指しています。
計算する主体も異なります。その違いは以下の通りです。
住民税は、地方自治体が計算。
所得税は、給与所得者の場合は、源泉所得税を天引きし、ほぼ『年末調整』※1で完結。個人事業主等は納税者自らが『確定申告』※2を行います。
※1会社が毎月の給料から源泉所得税を従業員の給与から差引き、各々の扶養親族や生命保険料等の事情を考慮し、1年間の税額を適正に再計算し、従業員が払いすぎていた場合は還付、少なかった場合は納税となる、毎年年末に行うもの。
※2『確定申告』は、1年間の所得税を毎年3月15日までに自ら計算し申告、納付する。
2.納付方法は3つ
①毎月の給与から住民税を天引きし、会社が代わりに納付する方法(特別徴収という)
特別徴収の場合は、会社が毎月の給与から住民税を天引きますので、会社がそれぞれの従業員が住んでいる自治体へ納付します。流れ的には、各自治体から会社へ通知された税額の12分の1を毎年6月から翌年5月にかけて給与の計算上控除し、会社が控除した額を会社が毎月翌月10日まで納付します(原則)。
②自分で納付する方法(普通徴収という)
確定申告を行った個人事業主等はこの方法で、自治体から住民税の通知書が送られきて、年4回(6月、8月、10月、1月)自分で納付します。
③年金から天引きする方法(年金特別徴収という)
年金にも住民税がかかります。年金から天引きされるため、年6回(4月、6月、8月、10月、12月、2月)自動的に引かれます。
3.住民税の内訳
住民税は、都道府県民税と市区町村民税で構成されています。
都道府県民税は、均等割や所得割、利子割、配当割、株式等譲渡所得割と細かくあるのに対し、市区町村民税は均等割と所得割のシンプルな構成となっています。
均等割は、所得に関係なく課される税で、都道府県1,000円、市区町村3,000円。
ただし、2023年までは、復興特別税が各々500円プラスになっています。
つまり、都道府県1,500円、市区町村3,500円、合計5,000円です。
所得割とは、文字のとおり、所得に対して課される税額のことで、都道府県4%、市区町村6%です。住民税は前年の所得に対して課されるため、計算式は、ザックリ以下のようになります。
都道府県民税=前年の所得×4%
市区町村民税=前年の所得×6%、
結果、消費税率と同じ、合計10%となっています。
※ 政令指定都市は、内訳が異なり、道府県民税が2%、市民税が8%になります。
4.住民税の申告が必要なのか否か
仕事をやめた場合や、自分の置かれている立場で住民税の申告が必要なのかどうかで悩まれたことはありますでしょうか。
基本的には、前の会社で年末調整を行った場合は、その会社からあなたの市区町村へ『給与支払報告書』というものが提出され、市区町村はその書類であなたの所得を知ることが出来るため、ご自身の住民税の申告は不要です。また、前の会社で年末調整を行ってはいないけれど、所得税の確定申告は行った場合であれば、こちらも申告不要です。しかし、所得税の確定申告を行っていない場合は、住民税の申告が必要となります。
シンプルに書くと次のようになります。
・年末調整していない➡確定申告していない➡住民税の申告必要
・年末調整していない➡確定申告した➡住民税の申告不要
・年末調整を行った➡住民税の申告書不要
※住民税の申告書の提出先・・・その年1月1日現在の住所地の自治体へ提出
申告期限・・・2月16日~3月15日
※住民税の非課税範囲に該当する以下のような方は、所得割も均等割りも発生しません。
・生活保護法の規定による生活扶助を受けている方
・障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下の方
※非課税範囲には、所得割、均等割りが課されない者の規定もありますが、今回は省略します。
5.まとめ
住民税は、後追いでやっていくるので、今年の所得よりも去年の所得の方が多かった方は、住民税の額に驚き、その時の状況次第では支払も難しくなり最悪の場合滞納になることもあります。このような事態に陥らないためにも、住民税の基本的なことは頭に入れておきたいところです。
税理士 野﨑 梨沙