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たった1日違いで無申告加算税

今回は、確定申告書等を法定申告期限と同日に郵便ポストに投函し、法人税及び消費税の全額を納付したけれども、何らかの理由により郵便局の通信日付が滞り、後日、期限後申告と指摘され、無申告加算税(通常の税額にプラス15%)が課された事例を分かりやすくご紹介します。

※難しい言葉は、なるべくかみ砕いて書いております。

照会裁決
(令4. 8. 2 関裁(法・諸)令4-1)

登場人物

請求人(訴えた人)・・・A
原処分庁(国税不服審判所)・・・国(分かりやすく国とします)

どんな経緯があったのか

Aさんは、令和2年度分の法人税と消費税の確定申告書を申告期限である、令和3年5月31日郵便ポストに投函し、同日、納期限でもあり、その全額を納付しました。これに対し、国は、Aさんの申告書は、期限後申告書であると主張し、その後法人税と消費税に係る無申告加算税を課す決定をしました。

期限後申告書・・・この例では、6月1日以降に提出された申告書
期限内申告書・・・この例では、5月31日までに提出された申告書

何が問題だったのか

Aさんの提出した確定申告書が、期限内申告書にあたるのかどうか

Aさんの主張

5月31日(申告期限)に申告書を、レターパックライトで午前10時20分頃投函。通信日印は同じく5月31日になるはずであるとし、何らかの理由でレターパックが滞らされた可能性がある。
5月31日に申告書を提出後、さらに納付すべき税額の全額を納付し、税務当局が同日収納しており、その収納日である5月31日で申告書が提出されたものとみなすべきで、Aの申告書は期限内申告書であると主張。
➡つまり、ここまで、Aさんは5月31日に郵便ポストに投函し、税金も払い、税務署もそれを収納したわけだから、自分の出した申告書は期限内申告書であり、期限後申告として扱われ無申告加算税が課されるのはおかしい!という事を言っています。

国の主張

申告書は、郵便で出され、レターパックライトの通信日付の表示は、令和3年6月1日であるから、期限後申告書に該当する。また、納付すべき国税の全額が5月31日までに納付されたからといって、確定申告書の提出日を法定申告期限内とみなす規定はない。
➡国としては、通信日付が期限後の6月1日になっており、5月31日に税金を払っているからとはいえ、Aの出した申告書は期限後申告書であり、無申告加算税の対象だ!と主張しています。

審判所が下した事実

①国税通則法第22条の規定によれば、レターパックの通信日付印である令和3年6月1日に申告書が提出されたものとみなされるから、Aの出した申告書は期限後申告書に該当する。

②これに対し、Aは何らかの事情によりレターパックが滞らされた可能性を主張しているが、国税通則法第22条は、個別的な事情によって通信日付印以外を提出日とすることを認めていない。

③さらに、Aが主張する納付すべき税額も納期限まで全額納付しているから、申告書はその収納日(5月31日)に提出されたものとみなすべきという事に対しては、納付すべき税額が全額納付されたとしても、期限内申告書としてみなす規定がないことから、Aの主張を採用できないとした。
➡つまり、レターパックの日付が期限後(6月1日)であったから、期限後申告書に該当し、個別に6月1日を提出日と出来ない。税金が支払われていたとしても、支払日をもって提出日とする規定は存在しないため、Aの主張は棄却に該当するということです。


通信日付印の重要性

平成18年の国税通則法第22条の改正では、通信日付印について以下のような記載があります。

『 納税者が提出する書類の効力は、原則として書類が税務官庁に到達した時に生ずることとなりますが、国税通則法22条は、郵便又は信書便により提出された納税申告書(添付書類及び関連して提出される書類を含む。)については発信主義が適用され、通信日付印により表示された日が提出日とみなされます。』

つまり、郵便事情による遅延の理由にかかわらず、『通信日付印が提出日』ということです。先程の例のAさん自身は、5月31日にポストに投函はしたのですが、通信日付印が6月1日になってしまったことから、期限後申告として扱われ、無申告加算税が課される事態になってしまいました。
なお、税法上の『みなす』に関しては、とても強力です。反証の余地がない、ひっくり返らないという意味になります。

(無申告加算税についてはこちら

過去にエクスパックでも争われた事例がある

過去の裁決(平23. 4.13 名裁(諸)平22-46)では、今は終了しているエクスパックが、郵便物か信書便物かどうか争われた事例もあります。エクスパックが信書に該当しないことから、国税通則法第22条が適用されず、通信日付印の表示日で提出したとは認められませんでした。

信書とは、申告書や、領収書、契約書などの区分に該当する請求書の類と、住民票の写しや、印鑑証明等の証明書の類に該当するものをいいます。

(信書についてはこちら

エクスパックについては、次のように言っています。

『エクスパックは、・・・信書を入れて送付することはできず、・・・国税通則法第22条に規定する郵便物又は信書便物のいずれにも該当しないものと認められるから、エクスパックを利用して提出された申告書等には、・・・国税通則法第22条は適用されない。』
➡つまり、信書扱いではないエクスパックは、国税通則法第22条が適用されないため、『通信日付印が提出日』という規定が通用しないといっています。

ちなみに現在のレターパック、レターパックライトは、信書を送ることが可能です。


まとめ

国税関係の書類については、事前に余裕をもって申請・提出するのが安心です。今回の例のように、無申告加算税が課される事案が何件か存在しています。郵送ではなく、より便利な電子申請、電子申告をお勧めします。郵送で出さなくてはいけない状況の時は、ポストに入れただけでは、いつ郵便局が処理するのかは分かりません。そのような場合は、信書が送れる方法で、通信日付印が期限内になることを意識し、くれぐれもご注意していただきたいと思います。


税理士 野﨑 梨沙

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